オレも、借家で育ったんだよね。 ちょうどこんな一階と二階で一軒になってる長屋。
ウチは下駄屋だったから、 壁にでっかい下駄の看板がついてて 良く目立ったの。
ガキ大将、いたねぇ。 世話好きのおばちゃん、いたよねぇ。 カラコロ下駄鳴らして先頭から帰ってくると 縁台将棋やってるおじさんがヨッ!てなもんで。
隣近所も犬も猫も みんなでワイワイ暮らしてた。 東京にも、昔はいっぱいあったよ。 幸福な路地。幸福な借家。
いまカイハツやらセイビやらで どんどん消えちゃってる。
さみしいね。許せないね。 ダメなんだよ。
タテモノだけあってもそこに住んでる人が しあわせでなきゃ しあわせな写真は撮れないの
「幸福写真」。 これ、今のオレのテーマ。
―荒木 経惟
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